本年度は新型コロナウィルス感染症の影響で100年企業探訪会が残念ながら中止となりました。
そこで、昨年11月に訪問しました「YMCA東山荘」についてのレポートを作成する事で、100年存続する企業(団体)の理由を探求し、皆様と共有させて頂くことにしました。
ミッション(使命)を職員の隅々まで行きわたらせるための厳しいリーダー研修や、献身的な“サーバント・リーダーシップ”の実践、地の利を活かした“とんがり”プログラム(ネイチャープログラム)の存在等、気付きの多い訪問でした。
特に「サーバント・リーダーシップの10の特性」につきましては、創新ネットシティ幹事一同の、会と会員の皆様へ対する姿勢の指針となっております。是非ご一読頂けますと幸いです。
Contents
YMCAとは
YMCAは1844年、イギリスの首都ロンドンで誕生したボランティア団体。産業革命によって生じた若者たちの生活環境を改善しようと、ボランティアの青年有志が結集して立ち上がった世界で最初のNPO団体。
その後世界に広がり、現在は世界120か国、約6500万人の会員を有する。
YMCAの特徴は、キリスト教に基づいた社会宣教の組織で、平等と正義、相互理解と愛の絆を築く人間関係、リーダーシップの開発、全人的成長への支援、平和社会の実現が運動の使命。
また、思想的にも財政的にも独立した組織で、賛同者や協力者によって支えられている。
宗教・人種にとらわれない社会教育・福祉団体である。
東山荘とは
1915年(大正4)7月、「明日を担う青少年と指導者の育成」を目的に、渋沢栄一や高橋是清、新渡戸稲造、広岡浅子などの協力により、学生YMCAの夏季学校の常設館として開設された。
戦後は民主教育、社会教育の進展に貢献した。
東山荘活動の現況
①地域社会連携活動
静岡県や御殿場市の行政と共同関係を築き上げながら、地元の人々との交流を盛んにしている。また、災害時には東山荘は地域の避難場所となる。
また、障害児プログラム支援も実施しており、発達障害や不登校、ひきこもりの子供たちの居場所つくりにも貢献している。
②ネイチャープログラム
富士山を望む御殿場の豊かな自然環境を生かして「自然と人、人と人」の関わりづくりを育む数々のネイチャープログラムを子供から大人まで幅広い年齢層に提供している。
野外活動を通しての全人教育の機会になっており、企業研修やチームビルディングにも活用されている。
YMCA東山荘のミッション
①ユースエンパワーメントの実現
YMCAは幅広い分野の学校や学習の場、ボランティア活動を通して若者の成長を応援している。
夢の実現に必要なスキルの習得にとどまらず、様々な体験や出会いの中で人間力を育む活動を提供する。
②東山荘での体験学習を通じて自己実現
「みつかるーつながるーよくなっていく」をスローガンに活き活きとした自分・社会の創成を目指す。
③地球市民の育成
環境・人種・平和などグローバルな視点から、世界的な課題に取り組んでいく地球市民を育てる。Think Globally!Act Locally!
*これらのミッションを達成させるために、徹底した職員教育がなされている。
指導的立場にあるリーダー(全国の総主事170名、および代表理事600名)に対し、75日間の研修を東山荘で実施。
研修前と研修後に約20,000字の論文作成及び口頭試問でミッションについてとことん理解してもらい、それぞれの持ち場に持ち帰り、スタッフへ伝授する。
この他、新人職員の研修から主事資格獲得の講座など各種の合宿研修も行っている。
YMCAが実践している「サーバント・リーダーシップ」に求められる10の特性
(隣人に仕える美学)by ノリス・ラインウィルバー元エルサレム国際YMCA 総主事
1)傾聴:Listening 相手が望んでいることを聞き出すために、まずはしっかり聞き、どうすれば役立つかを考える。
2)共感:Empathy 相手の立場に立って相手の心を理解する。
3)癒し:Healing 相手の心を癒す言葉をかけ、本来の力を取り戻させる。
4)気付き:Awareness 先入観や偏見に囚われず、気づきを得ようとする。気づきを与えることが出来る
5)説得:Persuasion 相手とコンセンサスを得ながら納得を促すことが出来る。
6)概念化:Conceptualization 個人や組織にビジョンを具体的に示し、伝える事が出来る。
7)先見力・予見力:Foresight 過去の経験に学び、現実を良く見て、次に起こり得ることを予見できる。
8)執事役:Stewardship 自分が利益を得る事よりも、相手に利益を与える事の喜びを感じる。
9)人々の成長に関わる:Commitment to the growth of people 仲間の成長をもたらすことに深い関心を持つ。それぞれの持つ価値や可能性に気付くことが出来る。
10)コミュニティ作り:Building community 人々が大きく成長できる共同の場を創り出せる。
100年企業たる所以
今回の訪問を通して、「YMCA東山荘が100年以上存続して来られた理由は何か?」を参加者に訊ねた。回答は以下の通り。
ミッション(理念理行)経営:「何のための」というシンプルな問いかけを繰り返しながら、事業目的を見失わなかった事。常にミッションに立ち返る姿勢。
柔軟性:ミッションに立ち返り、原点を大切にしながらも、時代や地域のニーズに合わせて常に変化しているところ。まさに「不易流行」/プログラムやロゴマーク等、外部からどう見られているかに留意して、変えていこうとしている柔軟な姿勢。
人材育成:ミッションを行きわたらせる為の厳しいリーダー研修を行い、組織の大事なところをきちんと理解し、実践できる人材をしっかり育成しているところ。
多様性:YMCA 自体がキリスト教関連団体ではあるものの、回教徒や異教徒も受け入れる等懐が深いところ。/ここに集う人はスタッフも参加者もオープンマインドで、しかも謙虚で温かい。
とんがりプログラム:霊峰富士山の麓であり、自然豊かな御殿場という地の利を活かした「ネイチャープログラム」やYMCA ならではのリーダーシップを育むことの出来る多彩なプログラムで、参加者が一体感や達成感を得られる。子供から企業のチームビルディング、シニアまで楽しめる体験型イベントを時代のニーズに合わせて提供している。
最後に
以上、塾で学んだ大切なキーワードが出揃った。所長講和だけでなく、実際にプログラムに参加させて頂けた事で、理解が更に深まった。
また、今回はネットシティの在り方についても考える良い機会となった。
参加者が自ら企画運営することが良い事なのか、それとも参加者が求める、より質の高いコンテンツを提供すべきなのかという非営利組織に共通する課題を改めて考える良いきっかけとなった。
YMCA東山荘の皆様ありがとうございました!